電磁波については、世界保険機関(WHO)国際電磁界プロジェクト、国際非電離放射防護委員会(ICNIRP)、国際がん研究機関(IRAC)等の国際機関をはじめとして、日本の行政機関である環境省等から、家庭内の電気配線や電化製品から発生する電磁波による「人体への影響」や「他の電化製品への動作不具合」に関する色々な見解と報告がなされております。
当社のアンテナ工事では、テレビ用のアンテナとブースター等の機材を取扱いますが、電磁波の一種である、地デジ電波及びBS/CS電波を取扱う工事内容になります。
電磁波について、現段階での見解と調査機関からの報告を理解しやすくまとめてお伝えしたいと思います。
電磁波は、「交流」の電源である電圧と電流で発生します。
家庭で使用されている、電化製品が電源コンセントにつながっているだけで(スイッチがOFFでも)交流電圧がかかっている状態になるので、その周りの空間には電気エネルギーの電界が発生します。
電化製品のスイッチをONにしますと交流電流が流れて、その周りの空間には磁気エネルギーの磁界が発生します。
家庭で使われる交流電源は、プラスとマイナス(+:ー)が時間的に50~60の周期で繰り返し変化していますが、その電流の変化の繰り返しの中で、まず「プラスの電界が発生」して、次に電界の発生の方向に対して直角右方向に右回りに磁界を発生させます。電流の向きがマイナスに変わますと今度は、「マイナスの電界」が発生し先ほどの右回りとは逆方向に左回りの磁界を発生させます。(下記の図参照)
このような、繰り返しの過程での中で「電界と磁界が影響し与えながら、進行方向に電磁波が発生」し進んでいきます。
「電子回路」写真は、電子回路を埋め込んだプリント基板の一例です。
アンテナ及びブースター等の機材、テレビやレコーダー、スマホなどあらゆる電化製品の中に存在します。
様々な役割を果たしてくれる電子回路には、スイッチ、コンデンサ、インダクタ、抵抗、配線ケーブル、電源部などの部品が多数存在しておりお互いが電気的につながっています。
★電子回路に電圧がかかり電流が流れると、電界と磁界が発生して、本来は必要でない不要の電気エネルギー「ノイズ」がプリント基板上に発生します。
★発生したノイズは、空間に漏れる電磁波と回路外に漏れる伝導電流に分かれますが、それらのノイズが他の電子回路に侵入して誤動作を起こさせます。
★不要な電気エネルギーである、電磁波の対策としては、EMC:電磁両立性と言う規制がありますが、下記でご説明いたします。
電磁波を簡単に説明してきましたが、電磁波には電離放射線の「γ線」「x線」と非電離放射線の「紫外線」「可視光線」「赤外線」「電波」などいくつかの種類があります。
世界保険機関(WHO)等の国際機関をはじめとして、日本の行政機関である環境省等の長い年月の調査結果の見解としては、電波防護指針などが策定している「安全基準値を下回る電磁波が身体に影響を与える証拠は認められない。」と言う見解で一致しています。
電化製品などは、電磁波の発生を極力なくすための規格通りに製造されており、その安全基準値は人体に影響があるとされている数値(50hzと60hzで200μT以上)よりも十分に下回っているので現段階での調査結果からは、影響は認められないとしています。
電化製品から発生するノイズ:不要な電気エネルギーである電磁波は、空間に漏れたり、漏れた電磁波の一部が他の電子回路に流れたりして動作の不具合を起こします。
EMIは、電磁波の放射(ノイズ源)に対する規格。
EMSは、電磁波を受信した時の耐性の規格。
EMIとEMS両方を満たすことを、EMC:電磁両立性又は電磁環境適合性があると言います。
EMIでは、ノイズ発生源の力を弱くする、流れる電流を少なくする、ノイズの発生効率を悪くすることです。
EMSでは、電子回路の受信感度を低くする、ノイズが漏れて流れていく効率を悪くする、電子回路をシールドして防護するなどです。
逆にテレビ放送電波の分野では、テレビ等の送信アンテナの送信効率を高める、ご自宅の受信アンテナの受信感度を高めるようにしますが、EMC分野とは逆の考えになります。
EMFA:日本電磁波協会では、低周波の電磁波(電界と磁界)について、ご自宅のセーフティガイドライン(規制ではありません)を策定して安全の評価基準としています。
日本電磁波協会がガイドラインとして安全基準の根拠としていますのは、スウェーデンやドイツのガイドラインや指針値を参考にしています。
自宅に有る電化製品を実際に測定してみました。
磁界発生量(μT)は、測定器の測定レベル下限値(0.01μT)より低かったようで、ほとんどの電化製品で数値が読み取れませんでした。
電界量(V/m)は測定できましたので、スイッチを入れて動作させた状態で、正面30cmと60cmの距離で測定しました。
電化製品からの測定距離が、30cmと60cmでは距離があるほど測定値がかなり下がることがわかりました。
EMFA:日本電磁波協会によるセーフティガイドラインの数値を大きく上回る電化製品が多いようです。
液晶テレビ | 30cm=208V/m 60cm=103V/m |
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ノートパソコン | 30cm=191V/m 60cm=77V/m |
電子レンジ | 30cm=107V/m:磁界発生量=0.7μT 60cm=41V/m:磁界発生量=0.1μT |
CDコンポ | 30cm=94V/m 60cm=59V/m |
冷蔵庫 | 30cm=38V/m 60cm=16V/m |
Wi-Fiルーター | 30cm=37V/m 60cm=15V/m |
電気ポット | 30cm=33V/m 60cm=6V/m |
電気炊飯器 | 30cm=19V/m 60cm=2V/m以下 |
扇風機のモーター部分 | 10cm=205V/m:磁界発生量=0.4μT 30cm=140V/m:磁界発生量=測定不可(0.01μT以下) |
下記は、環境省の環境保健部発行の「身の周りの電磁会について」のパンフレットに掲載されているものです。
人体に影響があるとされている、200μT(50hz・60hzの交流電気での)を十分に下回っているので、送電線や交流変圧器等から発生する電磁波が、人体に与える影響はほとんどないようです。
テレビ用アンテナ工事でお伺いしたときに、
「送電線や電信柱上の変圧器の影響でテレビの映りが悪くなっているのですか?」
と、ご質問を受けることがあります。それらから発生する電磁波が、全く影響を与えていないとは言い切れませんが、ほとんどの場合、AM・FMラジオの電波に対して影響を与えると思われます。
テレビ用の電波とラジオ用の電波では、そもそも電波の周波数の違いで性質が異なる(波長や電波の反射・回り込みの仕方等)ためにラジオ電波のようには影響はありません。
そのような場所のご自宅にアンテナ工事で伺う事もございますが、映りが悪い問題の原因は別のところにあります。
ご自宅でのテレビの映りに関する受信設備ですが、
に、大きく分けられます。
大きな枠組みで考えたとき、送り届ける部分、画面に映し出す部分が
共にノイズ(不要な電気エネルギーである電磁波)の影響を受けずにしっかり動作していないとテレビの映りに影響が出ます。
テレビ塔から送信されているテレビ電波信号を、アンテナでノイズなくキレイに受信して、ブースターやテレビコンセントを通してテレビに電波信号を送ります。
届いた電波信号そのままの状態では、テレビやレコーダーで画面に映し出すことはできません。レコーダー及びテレビのチューナー部分の回路を使い画面に表示していきます。
低い電気信号であるテレビ電波信号を、映像用のデジタル信号にするために、高周波電圧に高め(増幅)たり、アナログ信号とデジタル信号を交互に変換したり、圧縮されている信号を解凍したりします。
番組を見たい時には、回路を使い必要な番組のチャンネルだけを取り出します。他の番組のテレビ電波信号やノイズ等も回路を使いノイズをカットしてキレイに映し出します。
このように、テレビ及びレコーダーに内蔵されている電子回路には、届いたテレビ電波信号をキレイにテレビに映し出す重要な役割があります。
テレビの映り悪くなった時には、送り届ける部分と画面に表示する部分のどこで、ノイズ(不要な電気エネルギーである電磁波)が発生しているのかを見極めながら原因を調べていきます。